2012年11月04日
Posted by カミロイ人 at 2012年11月04日09:26Comment(0)

墨の替わりに水で書く

 「なぞり書き」の効用について前回のブログで言及したのだが、他にも変わった練習方法があるのでその有用性を検討してみよう。その方法とは何か?

 硬筆はともかく、筆や筆ペンでは「墨」もしくは「黒の染料」を使うので手についてしまったり、服についてしまったりする。こんなのはイヤだという人は実にスマートな方法を考え出す。つまり、墨ではなく水を使うのである。練習する時、墨の替わりに「穂先に水をつけて」書くのである。いわゆる「水書道」である。

 この方法なら汚れないし、乾いたらまた同じ紙に書けるので経済的で「一石二鳥」の効果がある。と信じている人がこの方法を使うわけだが、実はこれ、うまくいかないのである。

 私もやってみたことがあるのだが、筆に水をつけて書くと書いたときには結構うまくかけたように見える。だからこの方法で書き続けて、ある程度目処がたった時点で墨に切り替えればいいと思った。しかし、この方法で1週間ほど書いてみて、それから墨に切り替えたところ、全然見栄えがよくない。水で書いた字とは流れが異なっているし、字の縁を荒く感じるのだ。それに1週間前と字が変わっていない。

 どうも水は「タッチ」の悪い部分を隠してくれるようなのだ。その理由を考えてみたのだが、どうもこういうことらしい。

 水は基本的には「混ざり物がない」ものである。ところが、墨は水に混ざりもの(大きな粒子)を加えたもので「粘り」とか「抵抗」とかいうものを生んでしまう。だから、水で書いたものは抵抗なく書けてるが、墨にするとわずかの粘りと抵抗が字を「変形」してしまうのである。このわずかの抵抗が指先に与える衝撃はやってみれば実感するが、頭では「そんなわずかの抵抗が字を狂わすはずがない」と否定するのだ。しかし考えてみれば、水が粘るというのは聞いたことがない。オイルなら別だが。

 というわけで、この方法はお勧めできない。もっともこの方法がいいという人はそれで練習すればいい。人それぞれなので、効果が出れば「やめなさい」ということは言えないからである。何事も「創意工夫」は大切だ。ただ、下手になるような工夫はやめた方がよい。


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